話題の無人店舗「トライアルQuick大野城店」に利用されている技術を考察してみた

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無人店舗

みなさまこんにちは。ネクストシステムの広報担当田中です。

福岡に本社を置くディスカウント店大手のトライアルカンパニーさんが2018年12月11日に
夜間(22時-5時)の完全無人化を可能にした「スマートストア」新業態店を福岡大野城市に開いたことをご存知でしょうか。


(上の動画はトライアルQuickさんではなく、アイランドシティ店のものです)

実は弊社からそんなに遠くなかったので、社内でも話題になったんですよね。
弊社のAIエンジニアも行ってみたということだったので、技術的な観点からの考察をまとめてみました。

※あくまで考察ですので事実と異なる可能性がございます。ご了承ください。

スマートレジカートでお会計、天井には200台のカメラ

いろいろ経緯を調べていると、
2018年2月に「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」が福岡市にオープンし、知見を貯めたのち、2018年12月に夜間完全無人化を可能とした「トライアルQuick」が福岡県大野城市にオープンしたようです。

私は夜間運用じゃない時に行ったのですが、仕組み自体は運用されていたので試してきました。普通のレジもあるのですが、レジとカートが一体化したスマートレジカートなるものがあったため、そちらで買い物してます。

簡単にいうと以下のようなシステムでした。

  1. トライアルのプリペイドカードにチャージして支払い。
  2. レジとカートが一体化したスマートレジカートを押して買い物。カートにタブレットとバーコードリーダーがついている。(普通のレジもあるが夜間は使わない)
  3. 商品は客がカートに入れる前にバーコードをスキャンする必要がある。
  4. スマートフォンが天井にたくさん配置してありWi-Fiで通信している模様。
  5. レジを通る前にタブレット上で会計を行う。買い物を終えた後は専用のゲートを通り、スタッフの方に確認ボタンを押してもらってレシートもらって買い物完了。

先進的な雰囲気でワクワクします。

私は体験してませんが夜間の無人店舗時間の場合、専用アプリかプリペイドカードで入店し買い物を行うようです。

実際に夜間に行かれた方の記事はこちらから確認できます。
店内の様子やカートなどはこちらのブログか、ブログから参照されているリンクから飛ぶとわかりやすいです。

日本初の夜間無人店舗「トライアル Quick大野城店」がオープンしました。 「どうやってお店に入るの?」 「品物はどうな

無人店舗の仕組みは?

入店して視線を上に向けると天井には沢山のカメラが配置されてます。

こちらについて、トライアルQuickさんでは

店内には計200台のカメラを設置し、在庫状況や客の行動を分析。
(2018年12月12日 日本経済新聞 地域経済 九州経済 P21より)

とのこと。

アイランドシティ店では、カメラはカメラでも

・陳列棚と商品を認識するAIカメラ(旧型スマートフォン)
・人の動きを認識するAIカメラ(パナソニックさん製品)

の2種類のカメラを利用しているとのことなので、トライアルQuickさんでも同様の技術が使われているのではと考察します。

陳列棚と商品を認識するAIカメラは下記のようなことを行う役割のようです。

商品棚の陳列状況や来店客の商品への接触度を把握し、分析。商品が購入されると棚の画像から商品がなくなる。1分間に1枚の画像を撮影すれば棚の変化を認識できる。(日経マネー1月号 臨時増刊)

この技術はトライアルさんのエンジニアさんがAIの論文をみながら自力で開発されたとのこと。
すごい。

オープンソースのものを使われてるとのことだったので、社内で議論した結果、おそらくOpenCVの背景差分の技術を使ってるんじゃないかなと考えてます。

OpenCV 3.4.1により背景差分のアルゴリズム7種類を比較。Google Summer of Code 2017で生まれたアルゴリズムの結果がきれいだった。C++、Pythonのサンプルコードあり。

また、人の動きを認識するAIカメラについては下記の役割を担っているようです。

店舗の来店者総数、各売り場への到達具合・滞留時間、来店客の店内の流れなど把握する。このカメラを使えば購入しなかった人の行動も把握できる(日経マネー1月号 臨時増刊)

こちらについてはパナソニックさんの技術だそう。

パナソニックさんの提供システムがここまでやってるかは定かではありませんが、人の動きと人の個体識別ぐらいはやってると思われます。

ちなみにオプティカルフローという技術を使えば人の抽出は可能です。

ネクストシステムは、AI(人工知能:DeepLearning)・VR(仮想現実)・MR(複合現実)・AR(拡張現実)・iPhone・Android開発を得意とする東京・福岡のシステム開発会社です。開発のご相談はお気軽にお問い合わせください。

万引きについてはどう考えているのか

無人と聞いて気になるのは万引きについてですよね。
トライアルさんの回答としては以下のように考えているようです。

一般的な小売店の防犯カメラは約30台ほどですが、大野城店にはAIカメラ約200台と防犯カメラ約30台を設置しています。決済機能付きレジカートやセルフレジにもカメラがあり解析もできるため、これらが抑止力になると考えています。また、商品の納品対応や酒・タバコ類の年齢確認を行うため夜間でもバックヤードには若干名の店員が勤務します。売り場は基本的に無人となりますが、有事の際はこれらの店員が対応するため、問題はないと考えています。
FNN PRIMEより抜粋

こちらのコメントを見る限りは、一応バックヤードに店員さんがいて、AIカメラと防犯カメラで抑止しているみたいですが、今の所技術的に万引きの検出をしているわけではなさそう。

私もスマートカートでの買い物を実際に体験したのですが、
カートに自分でバーコードをスキャンしてから入れることに慣れておらず、バーコードをスキャンせずにカートに入れてしまうことが何回かあったんですよね。
もちろん気づいてスキャンして入れ直したんですけど。

万引きのつもりじゃなくても間違えて商品をとってしまう可能性もありそうです。

万引きする人

※イメージです

ただ、カートに重量を測定するような装置はなかったのですが、買い物カートについているタブレットの背面カメラがちょうど買い物カゴの中身が映るように設置されていたので、背景差分と個体識別を使ってある程度捕捉している可能性はあります。

また、人の動きと商品の2つの観点で検出しているとのことなので、今後このデータを組み合わせたら『万引きの可能性が高い』くらいまでは検出できそうです。

ただし、これらの技術を持ってしてもそこまで完全なものを作るのは難しいというのが社員の意見でした。

でもトライアルのエンジニアさんは最低限の資源で最大限の努力をして無駄のない設計をされてますよね。

万引きについて弊社のAIエンジニアのコメントはこちら。

AIエンジニア
AIエンジニア

システムでガチでコントロールしない限り、万引きはイタチごっこになるところがあります。画像認識オンリーが最も安いですが、当面それは難しいところがあります。

そうなると基本、人間のモラルの要素が大きいです。おそらくこの店舗の喫緊の目標は、どれだけの人間が万引きするか?
あるいは、カートで間違ってそのままいれてしまうのか?という情報を手に入れる調査の面が大きいと思います。(非常に重要な情報で大金かけても日本中の小売が欲しいデータ)
もしTrial Quickの2店目がでてきたら、目途がついたということで、爆発的に増えていく可能性があります(というのは、非常に設備投資が小さいシステムだったので)。

そうなると日本は今、AI利用が一番遅れていますが、モラルの高い国なので世界に先駆けて普及する可能性があります。

その場合、監視システムは後追いでも開発可能なので、データを持ってるところが有利です。もしかすると、トライアルさんは価格を極限まで追求したスーパーとしての競争力をもって全国展開を視野にいれているのかもしれません。

その仮説が正しければ、トライアルさんにとっての問題は、もしモラルに頼った場合、システムが簡単なので 模倣がでてくる可能性があります。

まとめ

トライアルさんが挑戦している無人店舗について、弊社のAIエンジニアの感想としてはこちら。

AIエンジニア
AIエンジニア

トライアルの技術者さんは奇をてらわず、着実な技術を積み上げて、アイディアと度胸で、安くて確実なシステムを作っている、ということがすごい。

確かに。

それにしても同じ福岡県にこんなチャレンジングな企業さんがいると、とても刺激になりますよね!弊社も頑張ろうと思いました。

ちなみに弊社でもWEBカメラだけで人間の骨格を検出する、AI骨格検出システム『VisionPose(ビジョンポーズ)』
という製品を2018年末頃より販売スタートしました。

現在エンタメ分野、工場・店舗分野、医療・介護分野、スポーツ分野など、幅広い分野でご相談をいただいてます。

防犯カメラ視点での計測も可能なので、無人店舗等にもご利用できそうです。

VisionPoseの詳しい情報については下記URLからどうぞ。

WEBカメラだけで3D解析を行うAI骨格検出システム「VisionPose(ビジョンポーズ)」は人間の動きを測定したい方のための唯一の国産SDKです。リアルタイム検出だけでなく動画や静止画からも骨格検出が可能。各種スポーツでのフォーム解析や監視システムへの組み込み、Vtuber配信など、さまざまなシーンでお使いいただけ...

ちょっと宣伝でした。現場からは以上です。

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